Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
きっと、彩恵は想定外のことに戸惑っているのだろう――。遼太郎は、そう思うことにした。
しかし、遼太郎がなだめる言葉をかける前に、彩恵から畳みかけるように、遼太郎への不満が飛び出してくる。
「……その、ラグビーのコーチ、断れないの?狩野くんが自分でプレーするわけじゃないんだから、どうでもいいじゃない。」
今度は遼太郎の方が、信じられないものを見るように彩恵を見つめた。こんなことを言いだすなんて、遼太郎の感覚では本当に考えられない。
――それはいくらなんでもワガママだ…。
そう思いながら、モヤモヤと立ち込めてくる感情をグッと心の奥底に押し込める。
深く一つ呼吸をしてから、遼太郎は口を開いた。
「話を受けたからには、責任もあるし、断るつもりはないよ。」
できるだけ冷静に意志を言葉にしたつもりだが、この言葉に彩恵の感情はもっと高ぶって、遼太郎をさらに責めた。
「狩野くんは私のことなんて、どうでもいいの?私のことを彼女だと思って一番に考えてくれてたら、真っ先に私に話をしてくれるんじゃないの?」
彩恵にそう言われて、遼太郎は思わず息を呑んだ。気取られないように努めている自分の心の中を、言い当てられたような気がした。