Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「…おい!遼太郎!!ボール行ったぞ!なにボーっとしてんだ!」
ゲームに勝つことに躍起になっている佐山の喝に、遼太郎は我に返る。とっさにパスを受け、ドリブルで一人かわすと、フワッと浮くようなシュートを打った。
プレーボーイの肩書の通り、佐山はスポーツにおいても女子の期待を裏切らない。何にでも器用にこなせるのは、何にでも熱中できるからかもしれない。それは、サッカーにおいても然りだった。
遼太郎の存在は、佐山にとっては重要な得点源だ。ラグビーとサッカーの違いこそあれ、どちらも同じフットボール。遼太郎のラグビーで培われた身体能力は、サッカーにおいても遺憾なく発揮されるので、佐山はどんどん遼太郎へとパスを出す。おかげで遼太郎は、この日ハットトリックの大活躍だった。
「狩野くんって…。ラグビーだけじゃなく、サッカーも上手なんだねぇ~。」
樫原はうっとりと、先ほどの遼太郎のシュートを思い浮かべるように視線を宙に漂わせた。
「猛雄、お前。遼太郎ばっか見てて、全然プレーに参加してなかっただろ?」
着替えをしていた手を止め、訝しそうな目つきで、佐山が樫原を振り返った。
「えへへ…。だって、カッコいいんだもん~。」
樫原の熱い視線を背中に感じて、遼太郎はその鍛えられた背筋をそそくさとTシャツで隠した。