Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
樫原のこんな言葉には、あまり深い意味はないのかもしれないが、出会った時に胸囲の大きさを訊かれたことが思い出されて、ゾワゾワと冷や汗が出てくる。
「…転がってきたボールが楕円形じゃないと、一瞬ちょっと戸惑うけどね…。」
遼太郎は、自分の落ち着かなさをごまかすために、そう言って謙遜した。そんな遼太郎をよそ目に、佐山は分析を始める。
「まあ、遼太郎がめちゃくちゃサッカーが上手いことは確かだな。足も速いし、小回りなんかのフットワークもいい。」
「当たり前だよ。狩野くんはラグビーやってたんだから。何でも少しずつかじってるだけで、ちょっと上手な晋ちゃんとは違うよ。」
と樫原は、まるで自分のことのように、遼太郎のことを褒めたたえた。
「猛雄―…。何もやらねーお前に言われたかねーよ。ま、俺だって女の子の声援があれば、もっとテンション上がって活躍できたんだけどなぁ。」
「女の子は関係ないでしょ?狩野くんは鍛えてて、ひょろい晋ちゃんとは体つきからして違うじゃない。」
ピクリと遼太郎の体がこわばった。樫原が男を対象としてないことを、願わずにはいられない。
いつもは樫原のこんな言動を一蹴する佐山も、挑発されてムキになる。