Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
何が何でも道子を探し出して、デートをしたいと思うほどの情熱はなく、このまま帰ってしまおうか…という衝動が遼太郎の中に過る。
するとその時、手の中のスマホの着信音が鳴る。道子からの電話だった。
『…もしかして、会社の前で待ってるの?JRの新橋駅にいるから、来てくれる?日比谷口の方よ。』
道子は用件だけ言うと、遼太郎が言葉を発する前に、電話を切ってしまった。
遼太郎は訳が分からず首をひねる。新橋駅はここからすぐ近くだが、どうして道子はそんな所にいるのだろう…?
新橋駅に行ってみると、道子は駅前の植栽を囲む柵に腰かけて、遼太郎を待っていた。
「亀山先輩。インターンシップは…?」
遼太郎の問いかけに、道子は目を合わせただけで何も答えなかったが、先ほど見た学生たちと同じようにリクルートスーツを着ているので、インターンシップには行っていたみたいだ。
道子は、どこか行くところがあるのか、おもむろに歩きはじめる。遼太郎は、ただそれに黙って付いて行くしかない。
新橋駅近くのこの辺りは、小さくて古びた飲食店や風俗関係の怪しげな店もある。もう少し時刻が進んで、ネオンのきらめく時間帯になればまた違うのだろうが、今、道子が進んでいく街は、どう見ても〝デート〟をするようなところではなかった。