Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「やだ!遼太郎!!帰ってきて、まだお風呂に入ってないでしょ!?砂が落ちるから、座らないで!」
母親の悲鳴のような声を聞いて、遼太郎はソファにお尻を付けることなく、跳び上がった。
こんな風に母親から小言を言われると、まだ自分は高校生の時のままのような気がしてくる。続けて『宿題はやったの?』と訊かれてしまいそうだ。
リビングにも居場所がなく、遼太郎はダイニングのオイルヒーターの前でたたずんだ。手にある年賀状を1枚1枚めくって、じっくりと確かめる。遼太郎自身は年賀状を出していないので、これから返事を書かねばならない。
そうしている内に、リビングに俊次が姿を現した。
「母さん!いっぱい怪我してるよ!いてぇよー!!」
開口一番そう言って、大きな体に似合わず母親に甘えている。そして、母親も末っ子には甘いのだ。
「あらあら、俊ちゃん。頑張った証拠ね。」
と、戸棚の中から救急箱を取り出して、膝や肘にできた傷に薬を塗って絆創膏を貼ってやっている。
この様子に呆れたのは遼太郎だけではなく、姉の真奈美も同じだった。
「俊次。そのくらいの傷でヒーヒー言ってちゃ、ラグビーなんてやってられないって。ねえ、遼太郎?」
「まあね。」
姉から話を振られて、遼太郎も肩をすくめて同意する。