Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 伊納の部屋は、かつて知っている澄子の部屋と確かに間取りは同じなのに、その雰囲気は全く違っていた。


「は…?どういうこと?アパートなのに自家発電?」


 目を点にして、由起子が訊きなおす。


「違う、そういう意味じゃない。普通のこんな電灯をつけてなくて、小さなランプや間接照明で部屋全体が薄暗くって……。」

「ははあ…。要するに、足を踏み入れた瞬間から、『やる気』に満ち溢れてたわけね。」


 由起子がそう言ってニヤリと笑ったけれども、みのりにとっては思い出すのもおぞましい出来事だ。


「それに、部屋の片隅にサックスが数本飾ってあった。」

「…サックス?」

「うん、楽器のサックス。休みの日なんかに、芳野川の河川敷とかで練習してるんだって。」

「また!ガラでもない。モテたい根性丸出しの趣味!!…で、それからどうなったの?」


 いよいよその場面になりつつあり、由起子はますます興味津々だ。


「伊納先生は缶のカクテルか何かを飲んでて、私にはリンゴジュースを出してくれた。それから、伊納先生がリモコンをつついて、何気なく音楽が流れてきて…。」

「音楽を流して、気持ちをほぐそうとしてるね?どんな音楽だった?」

「……うーん、ジャズ、……かな?」

「おお?ジャズかぁ〜。やらしいほどにムード満点になってきたね。…それで?」


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