Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「もう少し飲みたいけど、一人じゃつまらないだろ?それに付き合ってくれればいいから。そんなに遅くならないようにするよ。」
優しい口調でそうは言っているけれども、伊納は有無を言わさないようにみのりの腕を取って部屋への螺旋階段を上っている。
無理やりに腕を振りほどいて、伊納の気分を害して逆ギレされたくない。静まり返ったこんな場所で、芳野高校の教員が騒ぎを起こしてしまうと、それこそ校長に叱られるほどの大事(おおごと)になる。
こともあろうか、伊納が鍵を開けているその部屋は、みのり自身何度も来たことのある澄子の部屋だった。
そしてみのりは、何も抵抗できないまま、とうとう伊納と二人っきりの密室へ、足を踏み入れてしまった――。
「それで?それからどうなったの??伊納先生の部屋って、どんな感じだった?」
由起子は食べ終わった夕食の食器を脇に片して、身を乗り出して訊いてくる。
この日、由起子は、みのりが伊納とどんなデートしたのか訊き出すべく、週末を利用して泊まりに来ていた。
「どんな感じって…。普通のデンキじゃなかった…。」
みのりは食器を積み重ねて台所のシンクへと下げに行きながら、目をクルリとさせて伊納の部屋を思い浮かべた。