Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 カラオケを歌い始める学年主任と若い講師たちから逃れて、みのりがカウンターの方へ座ると古庄もそれに続いて隣に座った。

 こんなふうに側に来られても、伊納に感じるような嫌悪感も、蓮見に感じるような違和感もなく、古庄の行動はすんなりと受け入れられてしまう。
 完璧すぎるその容姿に今更ときめいてしまうことはないけれども、その魅力をひけらかしたり、恋愛感情を介在させない古庄の存在は、却って心地いいとさえ思えた。


「仲松ねえさん。ねえさんには、本当にいろいろとお世話になりました。」


 開口一番、古庄がそう言って笑いかけてくれ、みのりもそれに応える。


「さっきの1次会じゃ、挨拶に行けなくて、ごめんなさいね。」


 古庄の前にはずっと女性職員が入れ代わり立ち代わり占拠していて、その身が空くのを待っている内に、1次会はお開きになってしまったのだ。

 古庄に女性が群がるのは相変わらずのことだが、彼はちょっと辟易したような表情で、肩をすくめた。


「こちらこそ、お世話になりました。これは形ばかりだけど、お餞別です。」


 みのりはバッグの中から封筒型の祝儀袋を取り出し、古庄に差し出した。

 古庄はそれを受け取って、しみじみとつぶやく。


「…送られる方って…、なんだか本当に寂しいなぁ…。」


 そんな古庄の感慨に対して、みのりも優しく微笑む。


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