Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 だけど、こんな祭りの日に、浴衣で着飾りながら一人で歩いている人間は、却って目立ってしまうのだろう。境内を行き交う人々から、チラチラと視線を投げかけられて、居心地の悪いことこの上ない。


 祇園祭の時期特有の、蒸し返すような暑さがまとわりついてくる。みのりがバッグからタオルハンカチを出して、額とうなじの汗を拭きとった時、肩をポンと叩かれた。

 思わず蓮見かと思って、みのりは体をすくめて振り返る。


「おねーさん、一人?」


 いかにも軽薄そうな男の二人連れが、そこには立っていた。みのりは返事もせずに、しげしげと男たちを眺め回す。


「うわぁ、こんなキレイなおねーさんから見つめられて、俺、嬉しいなぁ。」


と、男の一人はおめでたいことを言っているが、みのりは『あら、いい男ね』…なんて思って見つめているのではない。

 ずいぶん若い男なので、自分が教えた芳野高校の卒業生ではないかと、ついついみのりは確認してしまう。
 だが、知っている元生徒ではない。それに、どうも少し性質(たち)が悪そうだ。


「ねー、それより。一人で祭り見物なんて寂しいでしょ?俺らと遊びに行かない?」


 あからさまにナンパされて、みのりの顔つきはもっと険悪になる。


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