Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
母親にしてみたら、遼太郎にとってのみのりも、よく面倒を見てくれる〝いい先生〟という存在でしかないのだ。
教師と生徒の一線を越えてしまったことを知ったならば、きっとこんな評価はしてもらえないだろう…。
せり上がってくる暗い哀しみに、息が苦しくなる。唇が震えてしまうのを押し隠すように、みのりは〝いい先生〟を演じることに努めた。
「……遼太郎くんは……、あれだけ頑張っていましたから、大学でもしっかり学問を修めているんでしょうね。」
その言葉は、みのりの願いでもあった。
遼太郎が自分で夢を見つけて、それに向かって着実に前進していることを、事実として確認したかった。
それを確かめることができれば、あの時の〝別れ〟という自分の選択は正しかったのだと認めることができる。
「どうなんでしょう?遠く離れてますから、どんな生活をしているのかはよく分かりませんが、ゼミに入ってからは研究で日本各地に出かけて行ったり、3年生になってからはインターンシップっていうんですか?そういうのに申し込んで、就職活動も始めているみたいですね。…週末は相変わらず、ラグビーらしいですけどね。」
最後は母親もそう言って、遼太郎の相変わらずな一面に軽く笑いをもらす。
それを聞いて、みのりは安心して、心の中の硬い氷が解けだすような感覚を覚えた。