Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
自分が大学生の時には思い描いてもみなかった未来が、二俣の前には広がっている。彼の中に秘められた可能性に心が弾んで、みのりの表情も輝いた。
「御幸高校に通ってた彼女は、なんて言ってるの?寂しがってない?」
みのりがその話題を持ち出すと、みのりの表情とは対照的に二俣の顔が暗くなる。
「………いや、みのりちゃん…。俺、沙希とは、もう…。」
みのりはその言葉の意味を確かめるように、二俣の顔を凝視した。
「別れたの?……どうして?」
「俺が悪いんだ…。ちょっとした…いや、ちょっとじゃないか。まあ、事件が起こって、それきり……。」
二俣の歯切れの悪い説明からだいたいを察して、みのりは落胆の息をもらして、目を伏せるように頷いた。
「……そう。遠く離れていると、続けていくことは難しいよね……。」
二俣がこの芳野の街を離れてから、もうすぐ2年半になろうとしている。その境遇の変化と年月は、心から信じ合っていた恋人たちをも引き離す力を持っている。
そんなことを考えながら、それ以上二俣にかける言葉が見つからなくて、みのりは虚ろに視線を泳がせた。
二俣も、極まりが悪そうに唇を噛み、腕を上げて顔に滲んだ汗をジャージの袖で拭い取った。
そして、大きく息を呑みこみ、今日みのりに会いに来た目的を果たすために心を決める。