Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 普段の慌ただしさが嘘のように、ゆっくり流れていく時間。
 色とりどりに輝く花火の刹那的な美しさ…。


 その光景を見ていて、不意に遼太郎は意味もなく不安になった。

 今の自分は正しい場所にいるのだろうか…。こんなことをしていてもいいのだろうか…。
 大学生活も、あと半分も残っていない。早くみのりに会いに行きたいと思う反面、みのりに会いに行ける人間になるための時間の猶予が、あまりないことに焦りもあった。

 この不安が一旦心に過ると、普段の自分を取り戻すのに、それなりの時間を要した。遼太郎は少し一人になりたくなって、中庭の片隅から密かに姿を消した。


 その遼太郎の動きに、敏感に反応した者が二人いた。陽菜と樫原だ。

 まだ火花を放っている花火を投げ捨てて、すかさず遼太郎を追って中庭を出て行こうとする陽菜。そんな陽菜に気が付いて、樫原は反射的にその行く手を阻むように立ちふさがった。


「…どこ行くの?」


 樫原が声をかけても、陽菜は遼太郎のことしか頭にないようだ。二人きりになる絶好のチャンスを逃したくないのだろう。


「いえ、ちょっと。あっちに用があって。」


と、適当なことを言いながら、ろくに樫原に目を合わせようとしない。


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