Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
陽菜の言葉を聞きながら、樫原の中に怒りが込み上げてくる。気立てのよい気がつく女を演じて、その実はただの自己中な陽菜。この女から遼太郎を守らなければ……、樫原はその一心だった。
「そういうの、すごくウザいってこと、少しは自覚したら?」
樫原のその一言を聞いて、陽菜の顔も怒りで覆い尽くされ、険しい目で樫原を睨みつけた。
「私をウザいって思ってるのは、狩野さんじゃなくて樫原さんの方じゃないんですか?」
「………!!」
陽菜の視線に射抜かれ、陽菜のその鋭い言葉に本心を衝かれて、樫原の身体がすくみ上がる。唇が震えて、何も言い返すことができなくなってしまった。
すると、そんな樫原を見て、陽菜は勝ち誇ったような不敵の笑みを浮かべた。
「いくら樫原さんがやきもちを焼いても、虚しいだけですよ。少なくとも私は女ですから。私は樫原さんみたいに、最初から『恋愛対象外』っていうわけじゃありませんから。」
そう言うと、立ちすくむ樫原に視線を残しながら背中を向けて、陽菜は中庭を出て行った。
きっと、どこかで佇む遼太郎のもとへ駆けて行くのだろう。フワリと天使のようなチュニックを着たその後ろ姿が、夜陰に紛れていくのを、樫原はただ見送ることしかできなかった。