Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
樫原の声の勢いに驚いて、遼太郎は目を丸くし、戸口のところで振り返る。
「どうした?樫原。」
何の含みもない遼太郎の目に見つめられて、樫原はその心の内を吐露するべきかためらったが、思い切って口を開いた。
「狩野くん。彼女と、付き合ってるの?」
「……彼女って、誰のこと?」
陽菜のことはまるで意識になかった遼太郎は、眉をしかめて樫原に訊き返した。
「陽菜ちゃんだよ。」
「長谷川と?!まさか…!一緒にいたら分かるだろ?付き合ってなんかないよ。」
と、樫原はその疑念を遼太郎に一蹴されたが、逆に側にいるともっと疑いたくなってくる。
先ほど側で聞いた、二人の〝あ・うん〟の呼吸のような会話は、プライベートを共有しているからこそ交わせるものだった。
「彼女とは付き合っちゃダメだよ!!」
「だから、付き合ってないよ。」
「付き合ってなくても、あの子を側に置いちゃダメだよ!!狩野くんが不幸になるよ!」
血相を変えたような口調で、そこまで樫原が言うのには、何か理由がある…。遼太郎は戸口から歩を戻して、きちんと向き直ると樫原を正面から見据えた。
「長谷川はただのゼミの後輩だ。どうしてそんなに、長谷川のことを気にするんだ?」
真剣な表情の遼太郎から、面と向かって問い質されると、樫原はグッと言葉を飲み込んだ。
端整な遼太郎の顔を見上げると、胸が苦しくなって、もう自分の心を隠しておけなくなる。