Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
危機から回避され、みのりが息をついて顔を上げると、遼太郎が背中側から腕を回してみのりの体を支えてくれていた。
「そこ。前に来た時に、段差があるの知ってたんです。」
遼太郎に言われて、みのりが足元を確かめると、確かに小さな段差があった。
「先生は、ほんとに相変わらずですね」
お礼を言うよりも先に、遼太郎から相変わらず〝ドンくさい〟ことを指摘されて、みのりは顔を赤らめて絶句する。
さらに、遼太郎の優し気な切れ長の目が、笑みを含んで細くなると、みのりの心臓が跳ね上がった。
昔と変わらない、大好きだった遼太郎の表情。そんな遼太郎を見るたびに、いつもみのりの胸は、まるで少女みたいにときめいていた。
胸が切なく鼓動を打ち始めて、みのりは自分が今、何をしようとしていたのか分からなくなる。
「……大丈夫だったですか?『相変わらず』って?」
しかし、陽菜に声を掛けられて、みのりは自分を取り戻した。陽菜から座るように促されて、テーブル席に落ち着く。
「私、とてもドンくさいの。自分では気をつけてるつもりなんだけど、いつも狩野くんや生徒たちに笑われてたわ」
「先生は、お綺麗なだけじゃなくて、可愛いところもあるんですね」
と、気の利いた相づちを打ってくれる陽菜は、みのりの斜向かい、遼太郎の隣の席にちゃっかりと落ち着いている。