Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
しかしその矢先、目的の店に到着してしまった。
「ここ、ゼミ生たちの飲み会なんかもするんですけど、安くてけっこう美味しいんです」
遼太郎とみのりの過去など知る由もない陽菜は、遼太郎に向けるものと同じ笑顔を、みのりにも見せてそう言った。みのりも陽菜に応えて、にこやかに笑ってみせる。
「私は飲めない人なんだけど、こんな感じのお店、大好きよ」
それを聞いて、遼太郎は密かに嘆息する。観念するように店のドアを開けると、女子二人を迎え入れた。
当然のように陽菜が先に入り、みのりはそんな行動を取ってくれた遼太郎のことをじっと見つめた後、視線を落として遼太郎の側をすり抜けた。
花のような澄んだ空気のような匂い。
みのりが側を通りすぎるとき、かつて足を踏み入れたみのりの部屋が、遼太郎の目に浮かんだ。
訪れたところは古い構えの店で、ピザやパスタをメインとするような洋風の居酒屋だった。
予約はしていなかったけれども、まだ時間も早いとあって店内にはまだ余裕があり、細々した調度品を見ながら奥の席に案内される。するとそのとき、みのりの足がなにかに引っかかり、前につんのめった。
「きゃ……っ!」
みのりからは思わず声が漏れ、そのまま床に激突すると思われた瞬間、体が宙を浮いて元の体勢に戻されていた。