Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「大丈夫です。ちゃんと事情は分かってくれてたと思います。」


 みのりには、余計な心配をかけたくない。陽菜があれで全てを理解しているとは、とうてい思えなかったが、遼太郎は敢えて自信を匂わせた。


『そう。なら、いいんだけど……。陽菜ちゃん、なんて言ってた?泣いたりしてなかった?』


 みのりは、本当に心の底から陽菜のことを心配しているようだ。そんなみのりに小さな嘘をついてしまうことは、遼太郎にとっても心が痛んだ。


「特に、恨み言なんて言ってなかったし、泣いたりもしてませんでした。」

『……そう。』


 もっと詳しい陽菜の様子を、きっとみのりは知りたかったに違いない。一言相づちを打つみのりの言葉の響きに、釈然としないものが漂う。きまりの悪い遼太郎が言葉を詰まらせると、沈黙が押し寄せてくる。


『うん、それじゃ。それだけ聞きたかっただけだから、今日はこれで。』

「はい……。」

『おやすみなさい。』

「……おやすみなさい。」


 遼太郎が心を躍らせた愛しい人との通話も、たったそれだけ、やっぱり陽菜のことだけで終わってしまった。「また会いたい」だとか「好き」だとかいう甘い言葉を、みのりも言わなかったし、遼太郎自身も言うタイミングを見つけられなかった。


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