Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 物足りないものを感じながら、遼太郎はスマホをローテーブルの上に置こうとして、もう一度みのりに電話をしてみようか……という衝動が起こる。
 しかし、遼太郎は思いとどまった。いくら愛の言葉を語っても、今ここでみのりを抱きしめられるわけではない。想いがいっそう募って、却って辛くなるだけだ。

 遼太郎は、大きく息を吐いてスマホを置いた。その体に残るみのりの感覚から気を逸らせるように立ち上がり、部屋を横切って冷蔵庫を開けた。



 遼太郎との電話を切って、みのりも深く息をついた。携帯電話を持つ手が、まだ震えている。
 自分の特別な想いを伝えたり、そういう特別な話をしていたわけではない。ましてや、遼太郎にとっては〝陽菜〟という重い話題だったのに、みのりは遼太郎の声を聞くだけで、胸が高鳴ってどうにかなってしまいそうだった。

 裏切られ失恋をしてしまった陽菜の心を思えば、とても不謹慎なことだと思う。それでも、もうみのりは、遼太郎への想いを止められなかった。


――裏切りたくない……。


 そう思っていても、陽菜に限らず、ほかの誰かを傷つけたとしても、もう引き返せなかった。


 ずっと我慢をして閉じ込めていた想いは、遼太郎に抱かれて解き放たれて、みのりを支配していく。


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