Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「…遼ちゃん…。今までに、女の子と付き合ったことある…?」
自動車のハンドルを握る遼太郎に、不意にみのりが口を開いた。
質問を受けて、遼太郎はピクリと体を強張らせた。質問が突然だったこともあるが、質問の内容の方に過敏に反応してしまったからだ。
みのりの中に、そんな疑問が浮かび上がってきたのは、先ほどの遼太郎のキスが、あまりにも上手すぎると思ったからだ。
遼太郎には女の子の影は見えず、触れたことなどほとんどないと思っていたけれど、本当はこれまでに何度もキスをした経験があるのではないか……。そんな思いが過ってしまった。
前方からチラリと視線をよこした遼太郎の表情には、質問の意図を解しかねた戸惑いがあった。
けれども、再び前を向くと、気を取り直したように、
「付き合うとか、そういうことはしたことありません。…人を好きになるのも、先生が初めてです。」
と、ありのままを答えた。
「…え。そうなんだ…。」
みのりの声は意外そうな響きを含む。すると、今度は遼太郎の方が、みのりの問いの真意を知りたくなった。
「どうして、そんなこと訊くんですか?」
自分に女っ気がないのは、みのりも当然承知していることだと、遼太郎は思っていた。