Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜


 看護師が終わりそうになっていた点滴を外して病室を出ていってからも、遼太郎はそのまま時間を忘れて、みのりの枕元でその寝顔を見つめ続けた。

 こんな時でさえ、みのりはとても綺麗で、その澄んだ心が透けて見えるようだった。愛しくて愛しくて、その想いが募るほど、その愛しい人を守れなかったことが悔しくてならなかった。


 みのりのことしか考えられなかった遼太郎の意識の中に、病室の隅にたたずむ陽菜の存在が不意に浮かんでくる。

 陽菜は何を思ってみのりを刺し、何を思ってそこに立っているのだろう。

 陽菜も自分で自分が分からなくなるほど、思いつめているのかもしれない。
 それでも、刃物を持ち出して人を刺すなんて、自分勝手な思考の果ての〝犯罪〟だ。どんな理由があっても、それは許されることではない。
 何よりも、みのりにこんな傷を負わせるなんて、他の誰もが陽菜を許しても、自分だけは絶対に許さないと、遼太郎は思った。


 陽菜に対する憎しみが大きく渦巻いて、それは自己嫌悪と相まって増幅される。経験したこともない憎悪の感情が遼太郎を飲み込んで、とうとう遼太郎は自分を制御できなくなった。


「どうして、先生にこんなことを……。恨みがあるなら、俺を刺せばいいだろう?」


 遼太郎の低い声が、病室に響き渡る。陽菜は、その声にピクッと体をこわばらせたが、口を開くことはなかった。


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