Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「刺したのが腕じゃなくて胸だったら、死んでたかもしれないだろ?!胸じゃなくても、病院に運ばれるのがもう少し遅かったら、死ぬとこだったんだぞ!!」


「…………。」


「先生は、俺の命よりも大事な人だって言ってただろ?それを分かって、先生を殺そうとしたのかよ?」


 遼太郎にそう詰られても、陽菜は黙ったまま何も答えなかった。言い訳さえしない陽菜に対して、遼太郎は憎悪と怒りをますます抑えられなくなる。


「先生に手出しするなんて、絶対に許さない!今度こんなことしようものなら、その時は俺がお前を殺してやる……!」


 遼太郎は、ベッドの上の拳を握ってふり返り、憎しみに満ちた険しい顔で陽菜を睨んだ。
 あの優しい遼太郎が、こんな形相をするなんて。こんな激しい言葉を放つなんて。陽菜は体も思考もすくみ上がって、唇さえも動かせなかった。


「……遼ちゃん……。」


 その時、みのりのかすかな声が聞こえた。虚をつかれて、遼太郎の毒気が抜ける。
 みのりが気がついたことに安堵して、遼太郎は陽菜からみのりへと視線を戻す。すると、みのりはうっすらと目を開けていて、それから枕に頭を預けたまま、ジッと遼太郎の顔を見つめた。


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