Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
なぜみのりが泣いているのかは、遼太郎にも響き合うようによく解った。目の前にある切なさの大きさに、遼太郎自身押しつぶされそうだった。
「さっきは『たまに会うくらいがちょうどいい』って言ったくせに……、離れ離れになるたびに、こんなふうに泣いてたんじゃ、遼ちゃん困っちゃうよね……。」
みのりはそう言いながら、涙を押し込めるように目をつぶるけれど、却って涙が溢れて雫となって落ちた。
遼太郎はそっと手を伸ばして、みのりを腕の中へ迎え入れた。髪に唇を付けて、優しく包み込む。
「逆に俺の方が……、ホントに先生を帰せなくて、困らせてしまいそうです……。」
壁際でひっそりとみのりを抱きしめながら、遼太郎は囁きかけた。
他に何と言ってあげたら、みのりを慰めてあげられるのだろう?どうすれば、みのりは安心して飛び立つことができるのだろう?
――『結婚しましょう』……。
その言葉が頭の中に浮かんだ。今は離れなければならないけれども、いっそのことプロポーズして、みのりの未来の全てを、自分の人生と重ねたいと思った。そんな気持ちは、みのりへの想いを自覚した時から常に遼太郎の中にあって、今こそそれを言う時なのかもしれないと思った。