Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
……だけど、遼太郎は思い止まった。まだ自分は学生だし、こんな中途半端な状態では、またきっとみのりを悩ませて、迷わせてしまう。
それに、もう時刻も迫ってきている。みのりだけゲートの向こうへ行かねばならない。なによりも大切な言葉なのに、こんなどさくさに紛れて言いたくはない。
「……冬休みになったら、会いに行きます。」
少しだけ未来を展望できる遼太郎の言葉。みのりは顔を上げ、潤んだ瞳で遼太郎を見つめた。
「明日、冬休みになってほしい……。」
駄々っ子のような素直すぎるみのりの言い方に、遼太郎は表情を緩める。
「同感です。」
と、遼太郎が優しく微笑むと、みのりも微笑みを浮かべた。
「……それじゃ、行くね?」
「はい。俊次のこと、よろしくお願いします。」
いきなり俊次のことを持ち出されて、みのりは可笑しそうに笑った。
そして、思い切って歩き出す。遼太郎が途中で立ち止まっても、みのりは前進する。手荷物検査場に入る前に、一度だけ振り返って小さく手を振ると、その向こうへ消えて行った。
何度も利用している空港だけれども、遼太郎は初めて展望デッキへと足を運んでみた。爽やかな風が吹き渡る場所に出て、飛行機が数機、離発着するところを眺める。しばらくそうしていると、みのりの乗る予定の飛行機の発つ時刻になった。