ぼくのことだけ見てなよ
「さて、と。帰ろうか。送るよ」
「えっ…」

正直、驚いた。美島のことだから、その、あの、キスとか…してくるものだとばかり思ってたから…。

けれど美島は、スッと立ち上がって、わたしに手を差し出している。これは、手を繋ごうってことでいいはず…。

「……うん、ありがと。でも、ひとりでも帰れるよ?」
「だーめ。ぼくが椿姫と離れたくないんだから。言ったでしょ?ホントは、朝まで一緒にいたいんだから」
「………」

無言で、わたしが頷くとクスッと美島が笑い、わたしの手を取ってドアのほうへと歩いて行った。だけど、そこで素直に帰してくれる美島ではなかった…。

「美島…?」
「あー、ホントに帰したくない」
「えっ、」

その瞬間、美島が片手を伸ばし。部屋の電気をパチっと消した。

「ちょ、美島っ、」
「椿姫は、このまま帰りたいの?」
「あ、当たり前でしょ!なに言ってんのよ…」
「ウソばっかり。ぼくが立ち上がったら、驚いてたくせに」
「なっ…」
「キス、望んでたくせに」
「そっ、そんなこと!ちょ、美島っ!」

わたしが否定するも、全部ひっくり返され、そうこうしてるうちに美島のカラダが近付いてきて、抱きしめられた。

「や、だ…。無理っ、」
「なんでイヤなの」
「だって!ココロの準備とか!」
「そんなの必要ないでしょ?先輩とだって、してたくせに」
「そ、それはっ…」
「先輩とはできて、ぼくとはできないなんて、そんなのあり得ない」
「………」

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