ぼくのことだけ見てなよ
さっきから〝先輩〟という言葉が、たくさん出てくる。美島は、見たこともない先輩に妬いてるのかな…?

「ねぇ、美島…?」
「なに」
「見たこともない先輩に妬いてるの…?」
「……そうだけど?悪い?」
「い、いやっ、悪いなんて一言も言ってないよっ」

やっぱり、そうなんだ。美島も妬いたりするんだ。でも、わたしだって美島の過去の人たちに嫉妬くらいするんだからっ。

「ってことで、観念しなよ」
「えっ!?はっ!?やっ、だから、無理だってばー!」
「ちょっと、楓!あんた、なにしてるの!?」

その時だ。ドアの向こうから、美島のお母様の声がしたのは…。

「あーぁ。椿姫が大きな声出すから」
「わ、わたしのせいっ!?」
「そうでしょ?…もう、いいよ。出よう、送る」
「………」

なんで、わたしだけのせいなのよ…。確かに声を出した、わたしが悪いけどさ。だからって、わたしだけのせいにしなくたって…。

美島の声は、不機嫌とまではいかなくとも、おもしろくなさそうな声をしてて。でも、手は繋いだままリビングへと続くドアを開けた。

「あ、楓!」
「送ってくる」
「ねぇ、大丈夫?楓に変なことされてない!?」
「えっ、あ、はいっ!なにもされてないですっ」
「よかった…」

出て早々、お母様がわたしに近付き心配の眼差しで見てきた。驚いたけど、わたしの心配をしてくれて、なんだかとても嬉しかった。

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