桜の花びらの記憶
 幼い頃のお兄ちゃんと妹に戻った感じがしていた。

 満員電車の中で、懐かしいお兄ちゃんの匂い。

 お兄ちゃんの笑い声。

 私はお兄ちゃんと話をしなかった何年間かを取り戻す勢いで、電車の中で何でも話した。

 中学校の時のこと、今の学校に進学した理由、部活のこと……お兄ちゃんもたくさん話してくれた。

 まあ、お兄ちゃんの話はバスケのことばかりだったけど。

 それでも、お兄ちゃんの話をいつまでも聞いていたかった。



 何日も何日もお兄ちゃんと一緒に登校した。 

 桜の木の葉が青々としてくる夏休み。

 私が入った美術部の活動の時間はまちまちで、午前中からある日もあれば、午後からの日もあったので、行く時間をなかなかお兄ちゃんと合わせられない。

 でも、満員電車にもようやく慣れてきたので、ちょっと寂しかったけど、一人で乗ることができた。
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