溺愛ドクターは恋情を止められない
「そういうところが、好きなんだよね」
「えっ?」
小谷先生の口から『好き』という言葉が思いがけなく飛び出して、一瞬思考が停止する。
「松浦って、ホント優しいよな」
「いえ、そんなことは……」
もし、そう見えるのだとしたら、救急の他のスタッフより経験が少なく、いちいち感情が上下するから。
彼の視線から逃れたくて、再びビールを手にしたけれど、やっぱり飲む気にはなれなかった。
苦いからだけじゃない。
高原先生の前でしてしまった失態を繰り返したくない。
「お、来た来た。松浦、なにが好き?」
押し黙ってしまった私を気遣ったのか、運ばれてきた料理を私の前に置いてくれた。
「ほら、食うぞ。昼飯、おにぎり一個だったんだよ。腹減った」
「はい。いただきます」
小谷先生は、私にサラダを取り分けると、自分も食べ始めた。
いつ話を切り出したらいいのだろう。
ぼんやりとそんなことを考えながら、食事を始めると、小谷先生のスマホが震えた。