溺愛ドクターは恋情を止められない

「大丈夫。小谷も平気だよ」


小谷先生……。
そうだ、私、小谷先生と一緒に食事をしていて……。

殴られた瞬間のことは思い出せない。
だけど少し前のことはなんとなく頭に浮かんできた。


「小谷と食事に行ってたの?」


その質問に、今度は胸が痛むのはどうして?


「……誘って、いただいて……」

「そっ、か」


一瞬悲しげに見えた彼は、すぐに優しい笑顔に戻った。


「松浦のおかげで、あの子はケガひとつなかったよ」


その時のことをなにも思い出せない私は、うなずくしかない。


「怖かった、よな」


うん、怖かった。
恐怖が蘇り、ギュッと目を閉じる。

どうしてだろう。
なにも覚えていないのに"怖い"という感情だけは残っている。


「泣いても、いいぞ」

「先生……」
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