溺愛ドクターは恋情を止められない

「後悔しか頭に浮かばなかった。どうしてあの時、父親を殴り倒してでも止められなかったのかと。医師としての立場が、邪魔をした」


それは仕方がない。
あの父親がどれだけひどい男でも、医師として対峙していた彼が、患者の父親を殴るわけにはいかなかっただろう。


「大丈夫です。先生が、こうして助けてくれたから……」


彼は私から目をそらさない。


「いや、それだけじゃないんだ」


それだけじゃない、って?

だけどそれきり口をつぐんだ先生は、「眠るまでここにいるから」と優しい言葉をかけてくれる。


「大丈夫ですから、お仕事に戻ってください」


当直なら、他の患者も診なければならないし、時間があるときに寝ておかなければ、朝から外来もあるはず。
< 279 / 414 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop