溺愛ドクターは恋情を止められない
結局、注意点というほどのことはなにもなく、他愛もない話をしながら玄関に到着すると、彼からバッグを受け取った。
「不安になったら、いつでも呼んでくれ」
「ありがとうございます」
きっとあの日、怖くて眠ることができなかった私を見ているから、心配しているのだろう。
「松浦、これも約束だ。約束は絶対に破るな」
先生はそう言いながら、私に小指を差し出した。
「ほら」
なんだか照れくさくてためらっていると、先生が私の右手を握り、自分の小指に絡ませる。
「いいか、絶対に約束だぞ」
何度も何度も『絶対』と念を押す彼は、少し心配症だ。
「はい」
だけど、触れた小指から、彼の優しさが伝わってくる気がした。