溺愛ドクターは恋情を止められない
「気分は悪くないかい?」
「はい。お世話になりました」
「注意点を話したいから、玄関まで一緒に行くよ」
注意点ってなんだろう。
気をつけなければならないことは、もう聞いている。
先生は私の荷物をさっと持つと、ゆっくり歩き始めた。
「松浦、約束、覚えてるか?」
「はい。電話、ですね」
あの時、自分が父親を止められなかったからと、彼はきっと責任を感じている。
「うん。松浦はすぐに忘れるから」
「忘れませんよ」
「それはあやしい」
先生はクスッと笑いながら、意味深な返事をする。
「一応復帰は月曜からということになっている。だけど、少しでも体調が悪ければ、もう少し休みだぞ」
「はい。主治医の先生の指示に従います」
「よかろう」
私が回復してくると、先生の表情も明るくなった。