溺愛ドクターは恋情を止められない
「あーっ、もう言わないでください」
「なら、飲んでけ」
「――はい」
いつもは優しいのに、時々S気質が見え隠れする。
「お邪魔します」と入った二度目のその部屋は、相変わらず殺風景だった。
だけど、リビングのテーブルの上に、なにやらたくさんの書類が散らばっている。
「酒井に頼んだんだ。今度の論文の資料」
「そうなんですか」
そんな取り繕わなくたって、ふたりの付き合いを触れまわったりするつもりはない。
「座れば?」
茫然と立ち尽くしている私に、先生は部屋の隅にあるソファを指差した。
テーブルにはふたつのカップ。
そのひとつにはうっすらと口紅の跡。
どうしてだろう。
ズキンと胸が痛むのは。
チラッと視線を送ってしまったけれど、彼は気がつくことなくカップを持ってキッチンに行ってしまった。