勇者様と恋人宣言―アラサー勇者は恋がしたい―
「スッキリした!」
トイレから出ると、吐き出した後の爽快感に、私は思わず呟いた。


「だーかーらー、うるさいのよ!アラサー!」
生意気な女の声が聞こえた。


「私にはルーナって名前があるのよ!
大体、あんたもアラサーでしょうが。おちびちゃん?」
私は目の前の女を睨む。
わざわざトイレ前で待ってるなんて嫌な奴だ。

私は改めて女を頭から爪先まで見回した。
自慢だという赤毛を2つに結んだ、小柄で、生意気そうな顔立ちの女。名前はイレーネ。

歳が2歳しか違わないくせにアラサーとは失礼な話だ。


「そんなことはどうだっていいのよ!
今は早朝なのよ! 時間をかんがえなさいよ。
ここは寮なんだからね」
イレーネは真っ赤な顔をして叫んでいる。

小柄なことをイレーネはかなり気にしているらしい……

けど、私としてはツインテールがいけないと思う。
幼さ全開で、まさにおちびちゃんと言う感じだ。


「はいはい。花の独身寮よね。独身貴族万歳!」
私は茶化しながら、廊下を歩いた。


「そうよ! 誉れ高き国王軍の花の独身寮……って独身は余計!」

「あんたも、私も、アラサーの独身。間違いないわ」

「わたしは20代。アンタはギリギリ20代。メンタルが違うの!」

「はいはい」

私はようやく洗面台に辿り着く。
長かった。

私はイレーネがなにか言っているのを聞き流しながら顔を洗った。


うがい、歯磨きまでばっちりすませた頃だった。

「で、何があったのよ」
イレーネは文句を言い切ったらしく疲れたようにそう言った。
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