こんな私、私じゃない。でも私・・・
「じゃ神村行こうか?」 

今野君は専務と早川さんをそのままにして私に声を掛ける。

「私、そんなつもりないよ」

冗談だったとしても『口説いてる』なんて言われたくない。

私はすぐる以外に考えられない。

「今はまだいいよ」

なんか会話がおかしい。

何を言っているの?

私の躊躇いに気づいたのかどうなのか専務が口を開いた。

「真人、ちょっと来い」

と、専務が今野君の腕を掴み連れて行ってしまった。

えっ!?

私はどうしたら・・・

その場で早川さんと二人になった。

早川さんはエレベーターホールから少し離れ、階段下まで歩きはじめる。私は後ろに付いていった。

「神村さん、真人さんは俺の親父のやってる設計事務所に勤めてるんだ」

そうなんだ。それで「お世話になってます」なんか早川さんらしい。

「そうなんですか。専務は・・・義理のお兄さんだから?」

専務と早川さんのお姉さんが結婚したことは前から知ってる。

「専務・・・こうだいさんは昔、設計士だったんだ。真人さんとは仕事仲間だったから・・・あっこうだいさんって言うのは専務のことね。幸せの大きいだから、こうだい」

早川さんは私が疑問に思ったことを教えてくれた。

「ありがとうございます。専務が設計士だったなんて知らなかったです。早川さんは跡は継がないんですか?」

設計士にならなかったのだろうか?
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