あの日の雪を溶かすように
夫婦はこちらを振り向くと、一瞬、硬直して、すぐに返事をかえしてくれた。
男の方が、である。

「それです!ぁっ・・・ありがとうございます!!あの・・・今・・・
今とりに行きますんで!」

うれしそうである。 本当に。

良かった。

アリスは基本的に気の利かない女の子である。人に媚びるのもキライだ。
ただ、この時ばかりは違った。

「ぁっ・・・ぃ・・・いいですよ。私が持っていきますから。」

なんだか、そうしたい気分だった。・・・大切なモノ、踏んじゃったし。お詫びの意味もあったのだろう。
アリスは少し はにかんだ笑顔で、 スッと足をふみだした。
< 20 / 313 >

この作品をシェア

pagetop