迷うことなく、君に向けるなら
battle1 とある空にて

フライパンに落とした卵が、ジュッと熱音を立てて踊る。


「付き合った、その時は好きだったの。
ほんとうに好きで。
でも、ふとしたときにね。
いや、なんか違うかもって……」


卵を絡めた野菜炒めを、ひょんとひっくり返しながら、言葉を繋ぐ。その透き通った声は少々歯切れが悪い。

「あーー。これだから。悪びれもしないのね」

料理をしている少女の背中を見ては、
また同じ溜息に、またいつもの苦笑い。


「してる、よ。ごめんなさいとは思ってる」


ちん、と音を立ててできたパン二つを取り、炒めたものを取り分ける。

朝食をふた皿分用意した少女は肩につくくらいのふわりとしたミルクティー色した髪の毛を束ね、先程から悪態を付く所の机へと持って行った。


「いーや。思ってないね」

「そんなこと、ない」

「僕は“誰”のせいで此処にいるんだっけ?
僕の存在のこと、理解してるの?」

「ええと、はい。私のせいです。ちゃんとユザのことも理解してる」

申し訳なさそうにいって、少女は目の前に腰掛ける。

「まぁ僕も暇つぶしにいいけどね。
にしてもまぁびっくりしたよ。

ーーひよっこ天使のシェナが、あの大悪魔の左腕ともされる召使いの僕を召喚魔法で奪っちゃったんだからね」






君と出会うまで、あと10時間。
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