好きで、言えなくて。でも、好きで。
「吹蜂、着いたぞ。鍵はどこだ?」



無事ドアの前まで辿り着いたはいいが、鍵がないと入れない。



「ぅーん……かぎってかばんじゃん。いつものとこー」



ムニャムニャ言いながらも、背中で威叉奈は答える。


しかし、



「(いつもって……。俺は賭狗膳じゃないんだがな。)」



一番間違えて欲しくない人間に間違えられた。


賭狗膳は、不良であった威叉奈を警察へと引き上げ、更には親がわりだということは、棟郷も承知しているのだが。



なんだか、釈然としない。



「吹蜂、とりあえず降ろすぞ。」



なんとか鞄の中から鍵を探しだして、威叉奈を布団の上に寝かせる。


一件落着と、帰ろうと立ち上がる………



「ぅわっ――………」



何故か強い力で腕を引っ張られ、倒れ込んだ。



「いって……おい、吹蜂……なにを………」


「えへへっ。とーごーさんだぁー」



痛みで瞑った目を開けると、すぐそばにいた威叉奈が、にこーっと楽しそうに笑う。



「っ………。よ、酔っ払いは大人しく寝てろ。」



その顔に鼓動が早くなるのを感じ、棟郷は掴まれている腕を離そうとする。
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