二人一緒の夏


裕樹とは、小さい頃からいつも一緒だった。
家が近所っていうのもあるけど、一番気が合うのが裕樹だったから。

川で水遊びする時も、山に虫を取りに行くときも、気が遠くなるほど出された宿題を片付ける時も、私たちはいつも一緒だった。

それが、普通で当たり前だったから、お互い東京に出た時も当たり前のようにしょっちゅう会っていた。
別々の大学だったのに、時間を見つけては一緒に過ごしているうちに、私たちは大人になっている自分たちに気がつき、いつしか一緒にいる意味を知っていった。

お互いが必要で愛しい存在だということに気がついたんだ。

それからは二人とも就職して、穏やかな日々を過ごしていた。

そんなある日、裕樹に栄転の話が来た。
元々海外赴任を希望していたとはいえ、こんなに早くに話が来るなんて、私も裕樹も思っていたなかった。
だから突然の話に、お互いとても戸惑ったのは事実。

小さな頃からずっと一緒で、まるで双子みたいに寄り添い生きてきたのに、その片割れが不意にいなくなるなんて、想像することが難しすぎたんだ。

だからなのか。
深く考えることも出来ずに裕樹は青い空を渡ったし、私はそれを見送った。
気持ちのままに断るなんて、できるはずはないと思っていたから。

なのに、心はどうしようもなくて。
私は、裕樹のいなくなった現実を受け入れるのにたくさんの時間をつかった。

何もする気になれなくて、仕事も溜め込んでいた有休を使って何度もサボった。
欠勤扱いになりそうなギリギリまで休んで、同僚にたくさん迷惑も掛けた。

食欲もなくなって、余り口にしなくても平気になって。
痩せていく自分の姿が醜くて、鏡を見るのも苦痛になっていったくらい。

それでも、時々届く絵葉書に心を救われて、私は徐々に生活を取り戻していったんだ。


< 3 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop