カタブツ上司に迫られまして。
「確かに何かの縁なんだろーなー」

ブツブツと呟く課長に、私は眉を八の字に下げる。

そんなことを言われても、とってもとっても困るのですが。

「部下が難儀しているのに放っておくのも寝覚めが悪いし、とりあえず、寝泊まりの場所くらいは提供してやる」

「え……いいです」

思わず呟いたら、睨まれた。

だって、ずいぶんと今はフランクだけど、課長だよ、課長。
色んな噂もある課長と、母親がいるとはいえ、ひとつ屋根の下だなんて嫌だわよ。

絶対に落ち着かないし。落ち着けるはずもない。

家って一日をリセットするために、あると思うんだ。

「鳴海。いいか?」

「はい?」

「俺はお前の上司だから、ある程度、給料の予想がつく」

まぁ、査定も課長がするでしょうし。

「安いビジネスホテルに泊まれば一泊五千円程度だろうが、それをまず、給料日までとりあえず計算してみ?」

まぁ、軽く見積もっても十万程度。

スーツの替えは一着しかないし、服も下着も買わないとならないし、食事もしないといけない。
敷金と礼金払って、新しい部屋を借りて? 家財一式買って?

火災保険って、いつおりるんだろう。

「すみません。宜しくお願い致します」

正座をして頭を下げたら、課長が溜め息をついた。

「お前はいつも。一人で頑張る傾向にあるからなぁ……頼りきりになるよりはいいが、頼る時には頼れよ」

そうして、課長のご実家でお世話になることになった。









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