優しい彼が残したもの
届けに来たのはいいけど、電子機器で傘なしとか怒られて当然だよね…
そう思っていると、
「雨の中走らせてごめんなさい。
大丈夫ですか?」
彼は怒っていなかった。
それどころか、私の頭上に傘をさしてくれていた。
「い、いえ!あのケータイ…」
「どうもありがとうございます。」
「は、はい。」
「本当に助かりました。送っていきます。」
「大丈夫です!失礼します!」
勢いよく頭を下げ、来た道を引き返した。
彼の声が聞こえたけど、振り返ることなく走った。
だって…
あまりにも整った顔で、直視できなかった。
お店に着いても、しばらく頭から離れなかった。