優しい彼が残したもの
仕方なく、急いでレジ作業をし、忘れ物を取ってお店を飛び出した。
運良く、道は一本道が続いていたため、真っ直ぐ走った。
慌てて出てきたから、結構な雨にも関わらず、傘をさしていなかった。
ただ、忘れ物がケータイだったから、濡れないようにエプロンに包んだ。
「あっ、いた。」
少しスピードを上げ、声をかけた。
「すいません!ケータイお忘れです!」
不思議なことに、道には彼しかいなかった。
「あっ!」
振り返ると同時にポケットを触り、私を見た。
「あの「濡れちゃう!」
私の声に被せるように彼は言った。