優しい彼が残したもの


仕方なく、急いでレジ作業をし、忘れ物を取ってお店を飛び出した。


運良く、道は一本道が続いていたため、真っ直ぐ走った。


慌てて出てきたから、結構な雨にも関わらず、傘をさしていなかった。

ただ、忘れ物がケータイだったから、濡れないようにエプロンに包んだ。


「あっ、いた。」


少しスピードを上げ、声をかけた。


「すいません!ケータイお忘れです!」


不思議なことに、道には彼しかいなかった。


「あっ!」


振り返ると同時にポケットを触り、私を見た。


「あの「濡れちゃう!」


私の声に被せるように彼は言った。


< 5 / 8 >

この作品をシェア

pagetop