あのね、先生。-番外編-
「中村さんのこれからなんて、あたしが分かるわけないでしょ?あ、こうなってほしいっていう願望なら言えるけど」
「…願望ってお前…まあいいけど、じゃあどうなっててほしい」
迷ってるのかもしれない。
あたしは中村さんの学生時代を知らないけど、きっとこの人もマトモな恋愛をしてこなかったんだろうな。
何となく分かる気がする。
だから今こんな風に吉野先生にグイグイ押されて、今までは気づかなかった相手の気持ちが分かる立場にいることに動揺してるんだよね。
「あたしはね、中村さんが思うように行動してほしい。きっと中村さんは幸せになれるよ」
「そりゃよかった」
「蓮くんも言ってたけどね、多分中村さんと吉野先生、意外と気が合うと思うんだよね。気付いてる?」
中村さんは気付いてないけど、蓮くんと吉野先生が歩いてくる姿が見える。
「まあ、中村さんが決めることだし、無理にとは言わないよ。中村さんが一緒にいたいと思わなきゃ意味ないもんね」
あたしの言葉に中村さんは少し笑って、からかうように言った。
「篠原先生のことであんなに悩んでたやつとは思えねぇな」