あのね、先生。-番外編-

「…お前…」

ちょうど白城の向かい側に座って自分で持ってきた飲み物をストローで優雅に飲んでいるのは、同期の女。

白城は急に現れた見知らぬ女に若干困惑してるし。

咲良とは似ても似つかない。


「盗み聞きか、いい度胸してんな」

「やだ、加地くんが珍しく外でご飯食べてるから気になっただけだよ」

「嘘つけ、さんざんどこで食べんのか聞いてきて知ってただろ、お前」

デスクが隣で、何かと関わることが多いこの女は、顔は良いが中身がすごく残念でどうしようもない干物女だ。


「あ、初めまして。加地くんの友人の高野郁です」

外面はいい笑顔で暢気に自己紹介してるのは、高野郁(タカノイク)。

「ああ、初めまして。俺白城拓巳」

答えなくていいんだよ、お前も。



「お前さ、何。今日は営業の山田くんとランチじゃなかったのかよ」

「加地くんが外で食べるっていうから女の子かなって思って見に来たの!でも相手は男の人だし、もしかして加地くんってそっち系の……いたっ!」

誰がオネエだ。

ふざけんなよ。

「でも話聞いてたら、元カノの話してんのかなーって。加地くん会社の女の子の誘い滅多に乗らないから興味あったんだよね」

確かに、誘いはよくあるけど大抵断る。

明らかな好意は面倒だし、それならここにいる干物女と飲んでる方が数倍気楽だ。


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