俺様紳士の恋愛レッスン
「エン! やっと帰ってきた!」

「もーえー。私もうダメだぁー絶対頭おかしい女だと思われたぁー」

「はい? 何があったのよ」



――その後。

冷静を取り戻した私は、きちんとエレベーターを使ってオフィスへと戻ってきた。



「それがさぁー……」



先程デスクに放り投げた紙束を整えながら、盛大なため息を落とし、今し方の一部始終を語った。



「あははっ! エンって時々とんでもないことやらかすよね!」

「ちょっと萌、私けっこーヘコんでるんだからね!」

「だってさ、走って追いかけるのも、名刺握り潰すのも、どー考えても相手はドン引きでしょ。バカだなぁ」



私をけちょんけちょんに笑い飛ばしてくるこの子は、同期で経理部の笹川萌乃(ささがわ もえの)。


ふわふわに巻かれた栗色のロングヘアー。

上々の顔にはいつ何時でも完璧なばっちりメイク。

おまけに年上銀行マンの彼氏を持つ、憧れ要素満載のモテ女だ。

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