俺様紳士の恋愛レッスン
彼はいつでも、清涼な香りで距離を知らせる。



「よーく聞けよ、エン」

「ちょっ……!」



寄せられた視線に耐え切れず、その手から逃れるように顔を背けた。

と思ったら、今度は頬をぎゅむっと挟まれ、再び前を向かされる。



「人の話を聞く時は相手の目を見ろ。そう習わなかったか?」

「はひ」



いつかと同じく見事なタコ口にさせられ、止むを得ずその目を見つめた。



「これから俺が言うことは絶対だ。いいな?」

「はひ」

「よし、しっかり頭に叩き込めよ」



そう言った十夜の顔から、笑みが消えた。

代わりに現れた凛とした眼差しに、意識が飲まれそうになる。



「エンはまず、彼氏に『別れたい』アピールをしろ」

「……はひ?」

「付き合いが長い分、意思を伝えるのは簡単だ。普段と違う行動を取れ。
家の中では極力顔を合わせるな。分かりやすく避けろ。これだけでいい。いいな?」

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