俺様紳士の恋愛レッスン
比較的温和な萌が、今のように目を細める時。

それは彼氏の愚痴をこぼす時と、誰かを叱りつける時だけ。


つまり今、萌は私に怒っているのだ。



「篠宮! し、りょ、う!」

「あっ、はい、すみません!」



ゴメンと小さく呟いて、逃げるようにデスクを後にした。



こうして萌に叱られることは、今日が初めてではない。


私は何度、親切な萌を失望させてきただろうか。

愛を持って叱ってくれている萌には、心から申し訳ないと思う。



――萌が怒っている理由はただ一つ。

私がいつまで経っても、生温かいぬかるみから抜け出せないでいるからだ。




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