俺様紳士の恋愛レッスン
柔らかな言葉とは裏腹に、切り裂かれるような痛みが胸に走った。



「違う! 私は、私は優しくなんか……ッ」



耐え切れず、痛みを吐き出した。

私のためにスーツを仕立て直し、待っていてくれた貴方の気持ちなど露知らず、故意に遅れて帰ってきた私を、どうして優しい人間だと言えるのか。



「エンちゃん、どうしたの?」



私の顔色を窺う、純真な瞳が怖い。

タカちゃんは、本当は全て分かっているのではないかと。


私が返事をしなかったのは意図的で、全ては貴方から離れるためにやっていることなのだと。

貴方の言う『優しい』は、私を戒めるための嫌味なのではないかと。

私を動揺させるために、敢えて曖昧に『最後』という言葉を使ったのではないかと。


……怖い。

自ら望んでしたことのくせに、疎まれることが、心底怖い。

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