俺様紳士の恋愛レッスン
「エン終わった? 帰ろー」

「うん、帰るー」



結局定時を過ぎてもスマホが震えることはなく、積もりに積もったもやもやと一緒に鞄に押し込んだ。

外に出てみれば、じっとりと重たい雨が降っている。

昼は晴れていたのに。これだから梅雨は嫌われ者なのだ。



「展覧会、もうすぐだっけ?」

「うん。明後日、金曜」

「そっかー。遂にエンもフリーになるのね」



花柄の折り畳み傘から顔を覗かせた萌は、感慨深く微笑む。


改まって言われると、胸がじくりとざわめき出す。

当たり前だった「おかえり」は、もう二度と聞けなくなるのだ。



「……萌、怒らないで聞いてほしいんだけど」

「うん」

「私、ちゃんと別れられるか不安になってきた」

「そりゃそーだよ」


けろっと返された返事に、思わず「へ」とマヌケな声が出てしまう。

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