俺様紳士の恋愛レッスン
「優愛さんのお店行ってたの?」

「あぁ、月末の締めは見てやんねーと。っつっても、最近はアイツ一人で十分できるようになったから、俺はそろそろお役御免だけどな」

「そっか……」



声のトーンはいつになく優しいけれど、天を仰ぐ十夜の横顔には、やはり寂しさも悲しさも映っていない。



「つーかお前こそ、明後日の展覧会一人で行けんのか?」

「はい? 子供じゃあるまいし、行けますけど」

「そ」



十夜はブラックコーヒーを一口飲み込むと、それ以上は何も言わず、暫く沈黙のまま夜道を歩いた。

街灯に触れて揺蕩(たゆた)う2つの影は、重なりそうでも重ならない。


白い背中が導いたのは、遠山さん夫婦が住むマンションを隣に臨める小さな公園。

十夜は木製のベンチに腰掛けると、中指でコツコツと隣のスペースを叩く。

促されるまま腰を下ろすと、十夜は終わりのない曇天の夜空を見つめ、浅い息を一つ吐き出した。

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