俺様紳士の恋愛レッスン
「子供の頃、宝箱って持ってただろ」

「宝箱? あー、持ってたかも。川で拾った綺麗な石とか入れてたかな」

「俺はその宝箱の鍵を無くして、一生開けることができなくなった。けど余りに大切すぎて、宝箱を捨てることもできなかった」



淡々と語る横顔には、完璧な無の表情が浮かぶ。



「もう一生拝むことはできなくても、手放したくなかった。価値があるのは宝箱じゃなくて、その中身だってことは分かっていても」



遠回しな例えは、曖昧にしか理解出来ない。

なのにどうしてか、喉にせり上がってくる熱。



「何かに執着するのは初めてだった。だから、意固地になってた部分があったのかもしれない」



言葉に迷いを見せた十夜は、徐に視線を落とした。

< 236 / 467 >

この作品をシェア

pagetop